「棟板金」と聞いても場所が分からない方が大半だと思います。
棟板金とは、三角になっている屋根のとんがっている場所にある屋根で一番弱い箇所に取り付けられている金属部のことをさします。
今回はこの「棟」から発生する雨漏りについて解説していきます。
棟板金が雨漏りを防いでいる?役割について
屋根は面と面が重なってできています。
面が重なることで三角形の頂点となる部分が必ず生まれ、ここを「棟」と呼んでいます。
棟には、最も高い箇所にある「大棟」や寄棟屋根の4隅に傾斜がある隅棟(下り棟)などがあります。
この棟に被せている板金であることから「棟板金」と呼ばれ、棟板金は、スレート屋根や金属屋根で用いられています。
瓦屋根には棟板金ではなく「棟瓦」が取り付けられています。
この棟板金があることで、屋根の雨仕舞が完成し、屋根からの雨漏りを防いでいるのです。
棟板金は3つの部材で構成されている
棟板金の構成について解説します。
棟板金は「貫板(ぬきいた」と呼ばれる木材に、「釘」によって取り付けられている「板金」です。つまり「貫板」「釘」「板金」の3つのパーツで構成されています。
棟板金からの雨漏りの原因
棟板金からの雨漏りは、「貫板」「釘」「板金」のすべてが雨漏りの原因となりえます。
棟板金からの雨漏りで多い原因が釘穴やビス穴からの雨水の浸入で、棟板金の側面に打ち付けられている釘やビスが浮くことにより、隙間ができてしまいそこから雨水が浸入し内部の貫板に染み込んで発生します。
金属屋根だとどうしても経年劣化で錆が発生してしまいます。
棟板金に錆が発生することで脆くなり穴が開いてしまうということはよくあります。
錆が起こる原因としては、ガルバリウム鋼板であれば亜鉛とアルミニウムが剥がれてしまうことで錆につながったり、飛来物によって塗膜やメッキがえぐれる傷ができたり、海の近くでの塩害などによっても錆が発生する要因になります。
ガルバリウム屋根からの雨漏りについてはこちらの記事で詳しく解説しています。↓
瓦屋根の棟からの雨漏り
瓦屋根の頂点や平面部分の境目で斜めに伸びている部分には、瓦を固定したり隙間を埋めるために漆喰(瓦と瓦を繋ぐ役割)が使われています。
この漆喰が劣化などの為、ヒビが入ったり剥がれたりすると、そこから雨水が侵入し、ここから雨水が入ってしまうと、瓦の下を通って家の内部にまで侵入してしまう為、雨漏りになってしまいます。
また、棟瓦の中には土が入っています。
その土が経年劣化により、崩れてきたり、雨で流れて少なくなってしまうと、瓦がズレてきます。
瓦がズレてしまうと棟の一番上部分にある冠瓦が歪んできたりします。
棟瓦は少しズレてしまうと、今は何の支障が無くとも、必ず少しずつ、棟の形が変わってきてしまいますので注意が必要です。
ベランダからの雨漏りについてはこちらの記事で詳しく解説しています。↓
金属屋根、スレート屋根の棟板金の浮きによる雨水の侵入
棟板金は、突風や強風などにより、中の木が経年劣化などで弱くなり、板金を止めている釘が浮いてきてしまうなどの理由で棟板金が浮いてしまう事があります。
この状態のまま放っておくと、隙間から雨水が侵入して雨漏りの原因となってしまう為、早めの補修が必要になります。
雨漏りの修理: 板金屋根の棟と谷の重要性
板金で作られた屋根から水が漏れる、これはよくある問題です。その修理には、専門的な知識が必要なのです。特に、「棟」と「谷」という部分は、水が漏れやすい場所なので、その役割を理解することが大切です。
屋根の「棟」って何?そして、なぜ雨漏りになるの?
屋根の一番上の部分を「棟」といいます。風や雨に一番さらされる部分なので、ここは特に痛みやすいです。板金屋根のこの棟部分は、棟板金というパーツで覆われています。これが風雨や時間の経過で傷つくと、雨水が家の中に入り込む道ができてしまうんです。また、この棟板金がきちんと取り付けられていないと、雨水がこの棟を伝って家の中に入ってきてしまいます。
修理では、まずこの棟板金の状態をチェックします。必要であれば新しい棟板金に取り換え、しっかりと取り付けて雨水が入らないようにします。
屋根の「谷」って何?そして、なぜ雨漏りになるの?
屋根が交差している部分を「谷」といいます。ここは雨水がたくさん流れるので、雨が漏る可能性が高いです。この谷部分は、谷板金(または谷樋)というパーツで覆われ、雨水が屋根から落ちるようにしています。しかし、このパーツが古くなったり、壊れたり、うまく取り付けられていないと、雨水が家の中に入ってしまいます。
修理では、まずこの谷板金の状態をチェックします。必要であれば新しい谷板金に取り換え、しっかりと取り付けて雨水が入らないようにします。
谷板金に穴が空いたら雨漏りの注意
谷板金は、棟板金とは名前が似ているようで全然違う役割があります。
谷板金とは、屋根と屋根の継ぎ目にある谷状の板金で、屋根から流れてくる雨水を集めて雨樋に排出する大切な役割をしています。
銅板は酸化する時にできる緑青サビが内部の腐食を防ぐ効果があったため、ひと昔前の瓦屋根には「谷」の素材に銅板がメインで使われていました。
しかし、銅板の素材は柔らかく、経年劣化などによる穴あきが頻発したため、今ではサビに強いステンレスやガルバリウム鋼板などが使われています。
この他に板金に穴が空いてしまう理由としては
長い間、銅板谷の上を雨水が流れ続ければ劣化し、部分的に変色して穴があきます。
穴が開くことで内部に雨水が侵入し雨漏りに繋がります。
棟部分の保護方法
これらの問題を回避するためには、棟部分の保護が重要です。ここでいう保護とは、主に耐久性のある材料を使用し、適切な塗装を施すことで棟部分を雨水から守ることを指します。
- 適切な材料の選択: 屋根の棟部分の材料選びは非常に重要です。雨水や気候の影響に強い、耐久性のある材料を選択することが必要です。
- 塗装: 屋根全体、特に棟部分に対する塗装は、雨水による劣化を防ぎます。高品質の塗料を使用し、定期的に塗装を更新することが重要です。
- 定期的なメンテナンス: 定期的な屋根の点検とメンテナンスが必要です。これにより、問題が発生する前に予防措置を講じることが可能となります。
屋根の棟部分は、雨水の影響を最も受けやすい部位であり、その劣化は雨漏りを引き起こす可能性が高いため、適切な材料選択、塗装、定期的なメンテナンス、そして防水処理などを行うことで保護し、雨漏りリスクを軽減することが重要です。また、これらの作業は専門的な知識を必要とするため、信頼できる専門業者に依頼することが棟部分の耐久性を高め、長期的な雨漏り防止に繋がります。
屋根・棟の工事方法
屋根や棟部分の雨漏り対策の一つに工事があります。特に雨漏りの原因が瓦の劣化や棟部分の劣化によるものである場合、適切な工事が必要となります。
瓦の修理・交換
瓦の修理・交換は、屋根の工事方法の一つです。瓦が割れていたり、ずれていたりすると、そこから雨水が侵入し、雨漏りが発生します。専門業者に依頼して瓦を点検し、必要であれば修理や交換を行います。
棟の修理・補強
棟は屋根の最も高い部分であり、特に風雨の影響を強く受けます。そのため、棟が劣化していると雨漏りが発生しやすくなります。棟部分の修理・補強では、棟瓦を取り外し、新しい防水材で補強した後に瓦を戻す、といった作業を行います。
屋根材の交換
時には屋根材全体の交換が必要な場合もあります。特に古い建物では、屋根材が劣化して雨漏りを引き起こすことがあります。新しい屋根材に交換することで、雨水の侵入を防ぎます。
屋根の塗装
屋根の塗装は、雨水の侵入を防ぐだけでなく、屋根材の寿命を延ばす効果もあります。高品質な塗料を使用して塗装を行い、屋根を保護します。
これらの工事は専門的な知識と技術が必要であり、また安全対策も重要なため、専門の業者に依頼することをおすすめします。適切な工事を行うことで、雨漏りを防ぎ、長期的に建物を保護することができます。
棟板金の修理について
棟板金の劣化状況によっても工事方法は変わってきますが、棟板金の釘が抜けてしまっているだけの場合には、釘打ちコーキング工事を行ないます。
抜けてしまった釘を再度打ち込み、釘頭をコーキングで留めて釘が抜けるのを防ぐ工事です。
強風などで棟板金が飛んで行ってしまった場合は、棟板金交換工事が必要になります。
棟板金交換工事は、既存の貫板と棟板金の両方を撤去処分して新しい貫板・棟板金を取り付ける工事になります。
棟板金の交換
重度の錆が出てしまっている、穴が空いている、また台風や強風によって棟板金がめくれてしまった・飛散してしまったという方は棟板金を新しく交換するようにしましょう。
交換するのであれば、貫板を木材からプラスチック製の樹脂に変更しましょう。木材は水分を含んでしまい、それが腐食にまで発展するといったリスクがありますが、プラスチック製の樹脂であれば水分を吸収することはありませんし、当然腐食することもありません。こちらも棟板金を長持ちさせるためにお勧めです。
修理費用についてはこちらの記事で詳しく解説しています。↓
棟板金からの雨漏りの費用
一般的な屋根棟の修理費用は、スレートか金属屋根ならば「約30万円」が目安です。
和瓦・洋瓦の屋根ならば「約25~40」万円が目安となっています。
また、足場が必要なのか、棟瓦の段数はどのくらい必要なのか?などでも費用は大きく変わります。
もしも、風災による屋根棟の損傷だった場合、火災保険の対象となることが多いです。
屋根に換気は必要なの?
屋根に換気は非常に重要です。
屋根の換気システムは、建物内部の熱と湿気を効率的に排出する役割を果たし、以下のような多くの利点があります。
- 温度の調節:屋根の換気は夏場の屋根裏の熱気を排出することで、建物全体の温度を下げ、エアコンディションの効率を向上させます。これにより、冷房費の節約にもつながります。
- 結露の防止:屋根裏の湿気が適切に排出されないと、結露が発生しやすくなります。結露は木材の腐食やカビの発生を促すため、これを防ぐことは建物の構造的健全性を保つ上で重要です。
- 屋根材の寿命延長:屋根裏が適切に換気されていることで、屋根材が極端な温度変化にさらされることが少なくなり、屋根材の寿命が延びます。
- 空気の質の向上:屋根の換気は建物内の空気の質を向上させる効果もあります。湿気や不快な臭いが外に逃げやすくなるため、屋内の空気が新鮮に保たれます。
屋根の換気方法
屋根の換気方法にはいくつかの種類がありますが、主に以下の二つが挙げられます:
- リッジベント:屋根の最高点に沿って設置され、自然な空気の流れを利用して屋根裏の熱気を効果的に排出します。
- ソフィットベント:屋根のふち部分、通常は軒下に設置され、冷たい空気が屋根裏に流入するための通路となります。
これらの換気システムを組み合わせることで、屋根裏の空気が効率的に循環し、上記の利点が最大限に活かされます。適切な換気システムの設計と設置は、建物の持続的な健康と快適性を保つために不可欠です。
板金からの雨漏りについてのまとめ
屋根からの雨漏りの雨漏りの原因で多いのが、棟からの雨水の浸入です。
棟とは屋根の繋ぎ目として重要な役割を担っている部分の事を言い、屋根の面同士を繋いでいるため、雨漏りしやすい箇所とも言えます。
この棟部分が痛む事により、雨漏りが発生します。
また、屋根や外壁、建物全体を構成する板金部分において、雨漏りは非常に重要な問題です。雨漏りの原因は、屋根の瓦や材料の老朽化、工事不良、雨樋の詰まりなどが考えられます。
雨漏りを修理する際には、専門の業者に依頼することが一般的です。修理方法には、部分的に板金を張り替えたり、塗装を行ったりする方法があります。また、リフォームによる全面的な改修も選択肢の一つとなります。
修理にあたっては、板金の種類や工法についても知っておく必要があります。銅板やアルミ板などの材料が用いられ、工法には、シート貼りやバラスト工法、シーリング工法などがあります。
雨漏りの修理には、専門知識と技術が必要であり、素人が行うことは危険です。早期の発見と修理が大切であり、屋根や建物の定期的な点検を行うことが重要です。
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私自身は、一級建築士・基幹技能士・一級建築板金技能士など数多くの資格を保有して活動しております。
総合実績11万件以上で皆様の知る建物を数多く修繕してきました。