建物にとって雨漏りという現象は、建物の寿命を縮める大きな要因です。
雨漏りというとすぐに屋根や屋上防水などからと思われがちですが、実は想像以上に外壁面などから浸入している事も多いです。
また、住宅の持ち主が気付かないほどのわずかな雨水の侵入でも、建物は劣化・腐朽します。侵入する量が徐々に増え、住人が異変に気付いた頃には木材の強度が無くなり床や天井が抜け落ちそうになっていた、という事例も珍しくありません。
クロスや石膏ボードなどの仕上げ材をはがしてみると中がカビだらけだった!という事もよくあります。
人間の身体と同じで、建物も異変を感じたら早期にしかるべき対策をとることが大切です。
雨漏りを防ぐ防水工事とは
住宅における防水工事とは、雨水の侵入を防ぐため、あるいは生活用水などを他の場所に漏らさないため、木造住宅・鉄筋コンクリート造・鉄骨造など様々な建物に防水加工を行うものです。
屋上・屋根・ベランダ・バルコニー・窓枠・ひさし・外壁など、あらゆる場所に、様々な材料で防水工事が行われており、屋上やベランダでの防水工事には、アスファルト・ウレタンゴム・塩化ビニル系シート・FRPなど、様々な種類の材料や施工方法を用いて、防水効果のある塗料を塗ったり、防水シートを敷き詰めたりすることで、水が入り込まないようにする工事を行います。
雨漏りを防ぐために防水工事を行う?
瓦・コロニアルをはじめとする屋根葺材を使うことができない傾斜屋根以外の屋根(陸屋根・屋上・バルコニー・ベランダなど)では、木材やコンクリートなどの水平な屋根面を漏水から守るために、雨水を防ぐ層(防水層)をつくって対処しています。
この防水層を設ける工事を防水工事といいます。
改修時においては、防水層を撤去するのか? 既存の防水層の上からかぶせるのか?
雨漏りしている場合では、なぜ雨漏りしているのか?
人の歩行頻度はどのくらいか? ベランダ・屋上の使用目的は?
『こんなはずではなかった!』と失敗しないためには、建物の構造と状態や既存防水層の種類などによって、適切な防水工法を選定する必要があります。
防水の劣化は雨漏りにつながる?
屋上・バルコニー・ベランダなどの防水が劣化していると、剥がれ、膨れ、ひび割れ、水がたまるなどの防水層の劣化症状が出て、ひどい場合には雨漏りにつながります。
・塗膜のひび割れ
防水層の表面にひび割れがある場合は、表面の塗膜が劣化しています。
塗装は劣化すると白い粉状になるため、表面が白っぽくなったり、手で触ると白い粉がついたりします。
ひび割れは放置しておくとどんどん広がっていき、トップコートが効果を発揮しません。
塗膜による保護がなくなると、防水層は直接紫外線の刺激を受け劣化が急速に進み、塗膜だけでなく防水層のひび割れを引き起こしてしまいます。
・塗膜の剥がれ、膨れ
歩行時の刺激や、物が当たる衝撃、紫外線の影響などで塗膜が剥がれてしまうことがあります。
塗膜が剥がれてしまうと、防水層が無防備な状態になってしまいます。
また、防水層の内部に水が入り込むと、気化した水蒸気が塗膜を押し上げて膨れを引き起こします。
・水溜りができる
防水層が劣化すると表面がわずかに歪んできて、水がたまりやすくなります。
また、下地の不具合で表面が平らに保てなくなった場合にも、水たまりが発生してしまいます。
水捌けが悪くなったということは、何らかの異常が発生しているため、塗装の劣化を疑ってみましょう。
防水工事の施工方法
ベランダや屋上などの防水工事には、膜を張る方法と、膜を作る、膜を複合する方法があります。
それぞれ工法の名称や使用する材料、施工方法が異なります。
さらに詳しく解説していきます。
塩化ビニル系シート防水とは
塩化ビニル樹脂系のシート状の材料1枚で構成された防水層です。屋外での日光による紫外線、熱、オゾンに対し優れた耐久性を持っています。
塩ビシートは素材自体が予め着色され高い耐久性があるため、防水層のメンテナンスとして一般的な保護塗装が原則不要になり維持管理費も節約することができるのがメリットです。
下地の種類や状態、使用される用途によって接着工法と機械的固定工法があります。
接着工法とは、下地およびシートの裏面に接着剤を塗り張り付ける工法です。
機械的固定工法とは、下地に緩衝材を介し、鋼板・ビス等により、防水層を機械的に固定する工法です。
塩化ビニル系シート防水の施工方法
塩化ビニル樹脂シート防水には、接着工法と機械的固定方法があります。それぞれの作業工程をご紹介します。
接着工法
接着工法を使って下記のように行います。
1.下地処理を行う。
2.接着剤を塗布し、塩化ビニルシートを敷設する。
3.まんべんなくローラーで転圧する。
4.接合部を熱や薬剤で溶かして圧着し、シーリング材で埋める。
機械的固定方法
機械的固定方法を使った場合の手順をご紹介します。
1.下地処理を行う。
2.絶縁用シートを器具で固定し、塩化ビニル樹脂シートを敷設する。
3.ディスクヒーターを使って、塩化ビニル樹脂シートを固定する。4.接合部、端を接着する。
5.溶着したら、シーリング材で隙間を埋めて仕上げる。
ウレタン防水とは
ウレタンゴム系塗膜防水(ウレタン防水)は、液体状のウレタン樹脂を塗り付けて、塗布した材料が化学反応して固まる(硬化する)と、ゴム状で弾性のある一体性のある防水膜が出来上がります。
液体状の材料を使って現場で仕上げる工法なので、複雑な形状をした場所でも継ぎ目のない完全な防水膜を加工できます。
ウレタン防水の施工方法
ウレタン防水は、密着工法と通気緩衝工法で方法が異なるので、それぞれご紹介します。
密着工法
密着工法で行うときは、下記の手順で行います。
1.対象箇所のゴミ取り、ケレン作業(塗装する前の下地処理)、目地のシーリングの充填を行う。
2.塗料を付きやすくするためにプライマーを塗布する。
3.ウレタン防水剤をコテやヘラを使ってまんべんなく塗布する。
4.補強布をしき、再度ウレタン防水剤をまんべんなく塗布する。
5.一度乾燥させ、乾いたら再度ウレタン防水剤を上塗りする。
6.トップコートを塗布して仕上げる。
通気緩衝工法
通気緩衝工法で行う場合の手順をご紹介します。
1.対象箇所のゴミ取り、ケレン作業(塗装する前の下地処理)、目地のシーリングの充填を行う。
2.塗料を付きやすくするために、プライマーを塗布する。
3.通気緩衝シートを敷き詰めるように貼る。
4.シートが重なっている部分は、水が漏れないようにテープ処理をする。
5.脱気筒を設置する。6.立ち上がり部分にウレタン塗料防水剤を塗布し、ガラスクロスを貼り付ける。
7.上から同じ塗料を塗布する。
8.平面にウレタン塗料を流し、コテを使って広げる。
9.乾燥させ、再度ウレタン塗料を流し込み、均一にコテで広げる。10.仕上げにトップコートを塗る。
FRPとは
FRP防水とは、防水用ポリエステル樹脂と防水用ガラスマットでつくられた防水層です。
その工法は、ポリエステル樹脂を塗布した上にガラスマットを張り付け、その上からポリエステル樹脂を合浸させて硬化させた後、さらに所定量のポリエステル樹脂を塗布して防水層をつくるものです。
FRPとは繊維強化プラスチックス(Fiber Reinforceed Plastics)の略称で、プラスチック材料の中で耐衝撃性に強く、耐水性や成形性がよいところから、建物の防水材では木造住宅や駐車場などに、成形品ではボート、自動車のボディパーツ、浄化槽、バスタブ、ヘルメット、太陽光発電の基礎架台など幅広く利用されてます。
FRP防水の施工方法
一般的なFRP工法は、下記のように行われます。使用する材料などによって、工程が異なる場合があります。
1.対象箇所のゴミ取り、ケレン作業(塗装する前の下地処理)を行う。
2.塗料が付きやすくするためのプライマー、専用下塗り塗料を塗布する。
3.防水用樹脂塗料を塗布し、ガラスマットを敷き詰め再度塗料を塗布する。
4.一度乾燥させ、3の工程をもう一度行う。5.中塗り塗料を塗り、上から着色、塗装をする。
6.ガラスマットの表面をサンドペーパーやディスクサンダーなどのやすり機械で整える。7.トップコートを塗り、仕上げる
FRP防水工事を行う上で、いくつか注意点があります。業者に依頼するときは、以下の点をきちんと確認しておきましょう。
・必ず2層工事を行う
・溶剤は火気厳禁
・下地の水分量は機械で測る
・気温によって硬化剤の配合量を調節する
・季節によって塗料を使い分ける
アスファルト防水とは
合成繊維不織布にアスファルトを含浸・コーティングしたシート状のルーフィングを貼り重ねて形成する工法です。
アスファルト溶融釜で220℃~270℃に溶融した防水工事用アスファルトを使用し、ルーフィングシート複数枚を交互に積層して防水層を作る工法で熱工法に分類されます。
現在では、施工できる業者は減ってきており使われないことが多いです。
防水工事の流れ
調査と診断
防水工事を始める前に、まずは建物の状態を詳しく調査し、雨漏りの原因や問題箇所を特定します。専門の技術者が現場を確認し、必要な診断を行います。これにより、適切な防水工事の方法や範囲を決定することができます。
計画と準備
調査と診断の結果をもとに、具体的な工事計画を立てます。この段階では、使用する材料や工法、施工スケジュールなどを詳細に決定します。また、工事に必要な許可や手続きを行い、近隣への配慮や安全対策も講じます。
施工工程
計画が整ったら、いよいよ防水工事の施工に入ります。施工工程は以下の通りです:
- 下地処理:既存の防水層や汚れを取り除き、施工面を整えます。
- 防水材の適用:選定した防水材を適切に適用します。ウレタン防水やシート防水、塗膜防水など、使用する防水材によって施工方法が異なります。
- 仕上げ処理:防水層が完全に乾燥した後、仕上げ処理を行い、耐久性を高めます。
施工後の確認
防水工事が完了した後は、施工箇所を丁寧に確認します。雨漏りの再発がないか、施工が適切に行われたかをチェックします。必要に応じて、試験やテストを実施し、問題がないことを確認します。また、施工後のメンテナンス計画も立て、長期的な防水効果を維持するための対策を講じます。
これらの流れを通じて、防水工事は確実かつ効率的に進められ、建物の雨漏り問題を根本から解決します。
屋上の防水層の雨漏り
「屋上の防水層」は、建物内への雨水の浸水をブロックする重要な役割を果たしており、防水層が劣化すると「ひび割れや剥がれ、色褪せ」などといった症状が現れます。
そのため、防水層の寿命に合わせて定期的に補修を繰り返し行う必要があるのです。
防水層の耐用年数は、ウレタン防水、FRP防水、アスファルト防水など施工法によっても異なりますが、いずれも劣化のサインが見つかったときには早急に補修工事を実施しましょう。
既存の防水層を生かすことができれば補修にかかる費用も抑えることができます。
防水工事の目安の費用
防水工事の費用は大きく変動するため、具体的な金額を出すのは難しいですが、一般的な目安としては以下の通りです。
- ベランダ防水工事: 約1,000〜2,000円/平方メートル
- 屋上防水工事: 約2,000〜3,000円/平方メートル
- バルコニー防水工事: 約1,000〜2,000円/平方メートル
これらはあくまで目安であり、使用する材料や施工方法、防水工事の規模、作業の難易度などにより変わります。また、これらの費用には、解体費用や廃材処理費、新規防水工事費用等が含まれていますが、特殊な作業が必要な場合は追加料金が発生する可能性もあります。
また、上記の価格はあくまで工事費用の目安であり、見積もりを取る際は必ず専門の業者に詳細な見積もりを依頼し、何が料金に含まれているのか、追加料金が発生する可能性があるのかを確認することが大切です。
これらの目安を基に、防水工事の全体的な費用を予算することが可能ですが、具体的な工事内容や状況により費用は変動しますので、専門家との事前の相談が必要です。
防水工事の料金の決め方
防水工事の料金は、多くの要素によって決定されます。以下はその主な要素です。
防水工事の規模 工事の規模は料金に大きな影響を与えます。特に対象となる場所の広さや、防水を行う範囲によって料金は大きく変動します。例えば、屋上全体の防水工事は、ベランダの一部だけの工事よりもコストが高くなります。
施工方法と材料 使用する防水材や施工方法も料金に影響します。一般的に、ウレタン防水はシート防水よりも価格が高くなる傾向にあります。また、高品質な材料を使用すると、それに応じて料金も上昇します。
作業の難易度 屋上やベランダなどの高い場所での作業は、安全対策が必要となるため、低い場所での作業よりも料金が高くなることがあります。また、複雑な形状や障害物が多い場所では、作業の難易度が上がり、それに伴って料金も上がる可能性があります。
既存の状態 既存の防水層の状態や、構造物の劣化状況も料金に影響します。例えば、既存の防水層の除去や補修が必要な場合、工事の時間と労力が増えるため、料金も高くなります。
防水工事の料金は、これらの要素によって大きく変動するため、見積もりを取る際は、事前に詳細な調査や相談を行うことが重要です。その上で、専門の業者に詳細な見積もりを依頼し、何が料金に含まれているのか、追加料金が発生する可能性があるのかを確認することが大切です。
何度も雨漏りが繰り返す場合
雨漏りが何度も繰り返される場合、その原因を徹底的に調査し、根本的な解決策を見つける必要があります。
一時的な修理ではなく、持続的な対策を検討することが重要です。
以下に、雨漏りが繰り返される場合の対策をいくつか挙げます。
1. 徹底的な調査
- 詳細な診断: 雨漏りの原因が多岐にわたる可能性があるため、屋根、壁、窓、ドアなど、潜在的な問題箇所を全て調査します。これには専門の業者による詳細な検査が必要です。
- 隠れた問題の特定: 以前の修理で見落とされたり、時間の経過とともに新たに発生した問題がないか確認します。特に、建物の老朽化による構造的な問題が原因である場合があります。
2. 根本的な修理
- 構造的な修正: 屋根の勾配が不適切で水が滞留する、または排水系がうまく機能していない場合、これらの構造的な問題を修正します。
- 高品質な材料の使用: 修理には耐久性と防水性に優れた材料を選びます。低品質の材料や不適切な施工が原因で雨漏りが再発することがあります。
3. 改善措置
- 防水層の強化: 屋根や外壁に追加の防水層を施すことで、水の侵入を防ぎます。これには、防水膜の設置や、シーリング材の塗り直しが含まれます。
- 排水の最適化: 雨水が正しく排水されるように、雨樋や排水路の整備を行います。必要であれば、新しい排水システムの設計と設置を考えることも一つの方法です。
4. 定期的なメンテナンス
- 定期点検: 雨漏りの原因を早期に発見し対処するために、定期的なメンテナンスと点検を実施します。特に、激しい天候後には点検を行うことが推奨されます。
5. 専門家の選定
- 信頼できる専門業者の選定: 適切な技術と経験を持つ専門業者に依頼することが、雨漏り問題の再発防止には非常に重要です。
これらのステップを踏むことで、雨漏りの繰り返しを根本から解決し、建物を長期的に保護することが可能になります。
雨漏りの相談先についてのまとめ
大切な家の雨漏り修理は、信頼できる業者に任せるのが肝心です。信頼できる業者をきちんと見極めるには、雨漏り修理についての知識を深め、業者選びのポイントをしっかりおさえておきましょう。
全国には多くの業者が存在します。信頼もできて金額にもサービスにも納得できる業者を探すのはなかなか大変です。
雨漏り修理の業者探しのことなら、「屋根雨漏りのお医者さん」までお問い合わせください。弊社には雨漏り修理のプロが多く加盟しております。お客様が安心して修理を任せられるプロをすぐにご紹介します。
「雨漏り修理に関する相談をしたい」という方も大歓迎です。お気軽にお問い合わせください
こんにちは
屋根雨漏りのお医者さん栃木県担当の臼井です。
弊社は、雨漏り修理専門のプロ集団で構成された会社です。
私自身は、一級建築士・基幹技能士・一級建築板金技能士など数多くの資格を保有して活動しております。
総合実績11万件以上で皆様の知る建物を数多く修繕してきました。