雨漏り修理をする際や、屋根をメンテナンスする際に、屋根の葺き替え工事や、カバー工法を勧められる事があると思います。
今回は屋根の葺き替え・カバー工法とは何なのか?
この記事では、各工事に適したタイミングや、メリット・デメリットを解説しますので、ご自身のお宅に合った最適な工事を行いましょう。また、費用相場などを知っておくことで施工の際の不安も一緒に解決しましょう。
屋根の葺き替えとは?施工期間は?
まず、屋根の葺き替えから説明します。
屋根の葺き替えとは、既存の屋根材をすべて撤去して、その上から新しい屋根材を葺き直す工事のことを言います。
屋根の工事の中で一番大きい工事になります。
葺き替える際は、すべての屋根材を取り除くので、屋根材の下のルーフィングシートなども新しくすることができ、新築時と同様な防水性能を加えることができます。
どんな雨漏りであっても葺き替えを行うことで直すことができるため、築年数が経った建物でよく提案される工法になります。
ただし、屋根を全て交換する工事になるため、工事費用が高くなりがちで、工期も長い工法になります。
一般的な30坪の戸建て住宅の場合、屋根の葺き替えの工事費用は120~200万ほど、工期は7日~15日ほどです。
屋根のカバー工法とは?
屋根の葺き替え工事と似た「カバー工法」というものがあります。
カバー工法とは、既存の屋根材を撤去せずに、その上から新しい防水シート(ルーフィング)と新しい屋根材を被せる工事になります。よく「重ね葺き」「カバールーフ工法」と呼ばれることもあります。
既存の屋根材を撤去しないため、葺き替えよりも費用がかからず、工期も短く工事を行うことができます。
ただし、屋根の劣化状態が酷い場合や、屋根材の種類によってはカバー工法を使用できないことがあるので、その場合には屋根の葺き替えを行う必要があります。
屋根葺き替えが必要となる場合
屋根の葺き替え工事が必要となるケースは、大きく分けて3つあります。
・屋根の寿命が切れている
・葺き替えかカバー工法でしかメンテナンスができない屋根材を使用している
・屋根下の野地板が劣化している
以上の3つが葺き替えが必要となる状況です。
もちろんすべてのケースで必ずしも葺き替えまで考えなくてはいけないというわけではなく、被害状況によっては部分的な屋根材の交換や板金の交換のみで対処できる場合もあります。
屋根の寿命が切れている
屋根材や防水紙には寿命があります。
スレート屋根が寿命を迎えると、防水性を失うため雨水を吸収し、下地を劣化させてしまい雨漏りへと繋がってしまいます。
瓦屋根であれば、下の防水シートが劣化することで雨水の浸入個所を作ってしまう事になります。
金属屋根であれば、錆によって屋根材や部材に穴があき、そこから雨水が浸入し雨漏りを誘発させてしまいます。
葺き替えかカバー工法でしかメンテナンスができない屋根材を使用している
屋根材によっては塗装を施すことができず即座に葺き替えか屋根カバーが必要となる屋根材が存在します。
ニチハパミール、セキスイかわらU、松下電工レサス、シルバスなど、これらの屋根材は各社がノンアスベスト屋根材の開発に取り組む中で発売された屋根材で、不具合の多さから現在は製造中止にもなっている屋根材です。そのため部分的な交換ができず、また、割れやすいといった不具合や、塗装をしてもすぐに塗膜が剥がれてしまうと屋根材のためメンテナンスも行うことができません。
屋根下の野地板が劣化している
雨漏りしている場合には、屋根の下にある防水紙を貫通して野地板が腐食してしまっていることがあります。
木材である野地板にとって水分は天敵であるためダメになってしまいます。
そのため、カバー工法では強度の問題で施工することができないため、下地の交換ができる葺き替えが行われます。
屋根の塗装についてはこちらの記事で詳しく解説しています。↓
屋根の葺き替えの費用対効果
屋根の葺き替えや、重ね葺き工事は、部分的な補修に比べて費用は高いですが、雨漏りの問題を根本的に解消でき、住宅の寿命を延ばすことができるため、長い目で見れば、中途半端な補修工事よりも、屋根全体を葺き替えた方が安心できます。
軽量な屋根材へ葺き替えを行うことで、自然災害にも備えることができるので安全にもつながります。
瓦屋根は瓦が重く、木造家屋が老朽化してくると、耐震性に不安が残ります。瓦がズレやすくなった、ヒビや欠けが目立つ、苔が生えてきた、などの症状があれば、葺き替えを検討しましょう。
築何年ぐらいで屋根は葺き替える?
屋根の葺き替えを検討する適切なタイミングは、屋根材の種類、建物が置かれている地域の気候条件、屋根の現状、そして定期的なメンテナンスの実施状況に大きく依存します。
一般的には築20年から30年が葺き替えの目安とされていますが、さまざまな要因によってこの時期は前後する可能性があります。以下に具体的な条件を詳述します。
屋根材の種類による耐用年数
異なる屋根材料は耐久性が異なり、葺き替えの頻度も変わります:
- アスファルトシングル:最も一般的な屋根材の一つで、耐用年数はおよそ15年から30年です。価格が手頃で取り扱いやすいが、激しい気象条件には弱い傾向があります。
- 木製シェイク:自然な見た目が魅力的ですが、適切なメンテナンスが必要で、耐用年数は20年から40年程度です。
- 金属屋根:耐久性に優れ、メンテナンスが比較的容易であるため、40年から70年の長い寿命を持っています。
- タイル屋根:耐候性と耐久性が非常に高く、適切に管理されれば50年以上持つこともあります。
- スレート屋根:最も耐久性が高く、50年から100年以上の長寿命を期待できますが、コストが非常に高いです。
気候条件の影響
屋根の耐用年数に大きく影響するのは、その地域の気候条件です。激しい雹、頻繁な暴風、大雨や極端な温度変化は屋根材を早期に劣化させる要因となります。たとえば、熱帯気候や寒冷地では屋根材が異なる環境ストレスにさらされ、その寿命に影響を与える可能性があります。
定期的なメンテナンスの重要性
屋根のメンテナンスは、その耐用年数を延ばす上で非常に重要です。定期的に屋根を点検し、小さな修理や清掃を行うことで、大規模な修理が必要になる前に問題を解決できます。メンテナンスが怠られると、小さな問題が大きな損傷につながり、結果として全面的な葺き替えが早期に必要となる場合があります。
屋根の損傷の程度
屋根の損傷が目立つ場合、または修理が頻繁に必要になる場合は、葺き替えを早めに検討することが賢明です。特に漏水が発生している場合や、屋根材が著しく劣化している場合は、全体の構造的な問題を引き起こす可能性があります。
屋根の葺き替えとカバー工法のメリット・デメリット
屋根の葺き替えとカバー工法のそれぞれのメリット・デメリットについてご紹介します。
屋根の葺き替えのメリット・デメリット
【メリット】
1.防水シート(ルーフィング)を新しいものに交換できる
2.屋根材を新築同様にできる
3.元の屋根材によっては耐震性が向上できる
全ての屋根材を撤去するため、新築同様の屋根材に変わるだけでなく、今まで交換ができなかった防水シートなど、屋根材の下までメンテナンスをすることができるのも魅力に一つです。
防水シートが劣化していると新品の屋根材であっても雨漏りが発生してしまうほど需要なものになります。
また、元が瓦の屋根材を使用している場合、スレート屋根やガルバリウムの屋根など、軽い屋根材に葺き替えることで耐震性は向上し、地震に強い家ができますので、安心できます。
【デメリット】
1.工事費用が高い
2.工期が長い
カバー工法に比べて、撤去する手間がかかるため、2週間ほどの工事期間と150~200万ほどの費用がかかるなど高額になるため、工事を行うタイミングを考える必要があります。
カバー工法のメリット・デメリット
【メリット】
1.リフォーム費用が安い
2.工期が短い
3.騒音や埃が出にくい
4.断熱・遮音・防水性能が上がる
カバー工法は、既存の屋根材の上から新しい屋根材を設置していくため二重構造になります。
そのため、一枚の屋根と比べて、断熱効果・遮音性・防水性が向上します。
また、屋根材を撤去する手間がかからないため騒音や埃などのトラブルも少なく、葺き替えと比べて費用が安く、工期も短く済むことができます。
【デメリット】
1.瓦屋根など、屋根材や劣化状態によって対応できない
2.屋根が重くなる
3.火災保険を使用したい方には不向き
既存の屋根が瓦屋根の場合や、屋根材や、下地の劣化が激しい屋根の状態ではカバー工法は使えません。
既存の屋根材の上に新しい屋根材をかぶせるため、屋根材によっては屋根が重くなり耐震性にも影響する可能性があります。
また、火災保険を使用して修理したい場合、原則として被害が発生する前の状態に戻す工事となっていますので、カバー工法では申請が下りない場合があります。
葺き替える屋根材の選び方
葺き替えやカバー工法で屋根を変更する際に、どういった基準で屋根材を選ぶべきか解説していきます。
選ぶ際の基準は大きく3つあります。
・見た目・デザイン
・価格
・耐久性・耐用年数
見た目・デザインを基準にする
屋根の色にこだわりたいという場合はスレート屋根がオススメです。
スレート屋根には、様々なカラーバリエーションがあるため家のデザインに合わせて選ぶことができます。
また様々な形状や質感のスレートがあるため、自分の好きなデザインにすることも可能です。
屋根材については下記の記事で解説しています↓
価格を基準にする
・屋根の修理にそこまでお金をかけられない
・劣化を直すだけの、とにかく安い屋根材にしたい
以上のような場合には、アスファルトシングルが適しています。
他の屋根材と比べて、比較的安い費用で施工ができます。
ただし、耐久性が低いことと、地域によっては早い期間で再メンテナンスが必要になる可能性があるため、初期費用だけでなくメンテナンスも含めた費用も頭に入れておきましょう。
耐久性・耐用年数を基準にする
耐久性だけを重視して考えるのであれば、日本瓦がオススメです。
日本瓦は50年以上の耐用年数があり、再塗装のメンテナンスを必要としないため、今の家に長く住み続ける想定であれば最適でしょう。
ただし、家の設計次第では耐震性に不安が出たりと適さない場合があるので注意が必要です。
次にオススメなのが、耐用年数が約30年ほどのあるガルバリウム鋼板の屋根がオススメです。
葺き替える屋根材の種類
ここからは葺き替えや、カバー工法の際の屋根材について特徴を解説していきます。
大きく4つの屋根材をご紹介致します。
・スレート屋根
・ガルバリウム鋼板
・アスファルトシングル
・日本瓦(陶器瓦)
屋根材の特徴①スレート屋根(コロニアル・カラーベスト)
現在日本での新築住宅で一番多く使用されているのがスレートの屋根材です。
スレート屋根はカラーバリエーション、デザインが豊富なため、家のデザインに合わせやすいのが特徴です。
また、多く使用されている屋根材ということもあり、施工できる業者が多いこともメリットの一つです。
デメリットとしては、強度や耐久性が低く、5~10年ほどで劣化し、場合によっては欠けたり、割れたり、反り返ってしまうこともあります。
そのため10年に一度くらいを目安に再塗装などメンテナンスを行う必要があります。
屋根材自体は安いですが、メンテナンスに手間とお金がかかる屋根材ですので注意が必要です。
屋根材の費用相場は4,500~6,000円/㎡
耐用年数は25年~30年ほどあります。
スレート屋根については下記の記事で解説しています↓
屋根材の特徴②ガルバリウム鋼板屋根
ガルバリウム鋼板の屋根材も近年普及してきており、とても人気な金属製の屋根材です。
ガルバリウム鋼板の屋根は、防水性・防火性が高く、軽量な屋根材のため耐震性にも強く、価格面、性能面で見てもコスパの良い屋根材と言えます。
断熱性・遮音性が低いのがデメリットとしてありますが、
施工する際に対策しますのであまり気になることはありません。
しっかりとした業者に依頼することが大切です。
耐用年数が30年~40年ととても長い屋根材です。
費用相場も6,000円/㎡と他の屋根材と比較してもそれほど高くはありません。
ガルバリウム鋼板屋根については下記の記事で解説しています↓
屋根材の特徴③アスファルトシングル
アスファルトシングルは15年ほど前から日本で使われ始めた比較的新しい屋根材です。
洋風な外観で、おしゃれということもあって人気の屋根材です。
アスファルトシングルは、防水性・防音性が高く、継ぎ目がないため雨漏りしにくいのが特徴です。
ただし、アスファルトシングルは接着剤で張り付けるシート状の素材ですので、強風に弱く、台風などの強い風が吹くと剥がれてしまうことがあるので注意が必要です。
ですので、目安としては5年ごとに点検を行うのが望ましいです。
耐用年数は20~30年ほどあります。
費用相場は3,500~6,500円/㎡です。
屋根材の特徴④日本瓦の屋根
瓦屋根は、最近見かけるこが少なくなりましたが、まだまだ現役の昔ながらの屋根材です。
日本瓦は、耐用年数が50年以上と言われ、条件によっては100年以上もつこともある耐久性に優れた屋根材です。
屋根を葺き替える際も、既存の瓦を再利用できるという点があり安く済むのと、再塗装のメンテナンスが不要であるため初期費用だけ高いものの維持費についてはそこまでかからない屋根材になります。
費用相場は9,000~16,000円/㎡と他の屋根材と比べるとかなり高額です。
瓦屋根については下記の記事で解説しています↓
屋根の葺き替えに補助金を使用する方法
屋根の葺き替えをする際に補助金を使用して工事費用を安くする方法があります。
補助金を使用するには、葺き替え工事だけではなく他のリフォーム工事をする必要が出てきますが、検討しているものがあれば補助金を利用するのも一つの手です。
補助金が使用できる条件として2つのリフォームがあります。
・耐震リフォーム
・省エネリフォーム
方法①耐震リフォーム
耐震強度の低い家に住まわれていて条件を満たしている方は補助金を使用できる場合があります。
補助金は自治体によって異なりますので、お住まいの地域で補助金を確認しましょう。
さて、耐震リフォームで補助金を受け取れる条件というのは以下の条件になります。
・昭和56年5月31日以前に建てられた建物である場合
・地上3階建ての、木造部分が2階以下の住宅である場合
・工事後の判定値が1.0以上であること
以上の条件にあてはまる場合、耐震リフォームを行うことで最大100万円の補助金が受け取れます。
昭和56年5月31日以前の建物でなければならない理由は、昭和56年5月31日に耐震基準法が改正されたからです。
また、判定値1.0というのは建物の強度などを指し1.0であれば倒壊する恐れが低いとみなされ補助金が支給されます。
耐震リフォームには、屋根の軽量化がオススメです。
現在、瓦屋根を使用しているのであれば、スレート屋根・ガルバリウムの屋根に変更することで屋根の重さを1/10程度まで軽くすることができます。
方法②省エネリフォーム
環境に優しい家にリフォームする場合、省エネリフォームで補助金を受け取れる場合があります。
その条件とは主に以下の4つです。
・断熱性や遮熱性の高い屋根にリフォーム
・ソーラーパネルの設置
・アスベストを含む屋根材の除去
・LED照明の設置
断熱性や遮熱性の屋根にリフォームする場合は、ガルバリウム鋼板の屋根材や瓦屋根に変更するのがオススメです。
また、断熱、遮熱シートを貼ったり、遮熱塗装を行うのも一つの手です。
お住まいの自治体によっても異なりますが、最大50万円の補助金を受け取ることができます。
ローン、補助金については下記の記事で解説しています↓
屋根の葺き替えについてのまとめ
屋根の葺き替えとカバー工法の違いは、既存の屋根材を撤去するか、重ねて葺き替えるかの違いです。
カバー工法の方が費用や工期を抑えることができますが、対応していない屋根材もあったりとデメリットもあります。
屋根を葺き替えるような大掛かりな工事を行う際は、補助金や火災保険など費用を抑えられるものを使用できるか確認することも大切です。
こんにちは
屋根雨漏りのお医者さん奈良県担当の山中です。
弊社は、雨漏り修理専門のプロ集団で構成された会社です。
私自身は、基幹技能士・一級建築板金技能士など数多くの資格と表彰状を保有して活動しております。
総合実績11万件以上で皆様の知る建物を数多く修繕してきました。