屋根から雨漏りしているときは、ご自身で屋根に上ってブルーシート、防水テープ、コーキング材などを施工しないでください。
まず室内で人の安全を確保し、雨水を受け、家具や家電を保護して、雨漏りの状況を写真や動画で記録します。そのうえで、屋根の応急養生に対応できる専門業者へ連絡してください。
厚生労働省の屋根作業向け安全資料では、屋根上作業に保護帽、安全靴、墜落制止用器具などが必要とされており、高さ2m以上でフルハーネス型の墜落制止用器具を使用する場合には、安全衛生特別教育も必要とされています。一般家庭にある脚立やロープだけで安全を確保できる作業ではありません。
気象庁も、風雨が強くなった後の高所作業や屋外点検は絶対に行わないよう案内しています。
この記事では、ご自身で行う屋根DIYの方法ではなく、専門業者が行う屋根の応急養生、その必要性、依頼の流れ、養生後に必要な原因調査について解説します。
緊急時の結論
- 屋根には上らない
- 天井が膨れている場所には近づかない
- 照明やコンセント付近が濡れていたら触らない
- 室内の安全確保と写真記録を行う
- 屋根の応急養生に対応できる専門業者へ連絡する
室内で今すぐ行う具体的な手順は、別記事「雨漏りを室内から安全に応急処置する方法」で詳しく解説しています。

屋根の「応急養生」とは何をすること?
屋根の応急養生とは、本格的な雨漏り調査や修理を行うまでの間、雨水の浸入量を一時的に抑え、室内や建物内部の被害拡大を防ぐための処置です。
応急養生は、雨漏りの原因を完全に直す工事ではありません。
雨漏り対応の4段階
| 対応 | 主な目的 | 担当 |
|---|---|---|
| 室内の応急処置 | 人・家具・床を雨水から守る | 居住者が安全な範囲で行う |
| 屋根の応急養生 | 屋外からの雨水浸入を一時的に減らす | 専門業者 |
| 雨漏り調査 | 水の入口と浸入経路を特定する | 雨漏り調査に対応した業者 |
| 本修理 | 特定した原因部分を修理する | 専門業者 |
ブルーシートを設置して雨漏りが一時的に止まったとしても、屋根材、防水紙、板金、外壁、取り合い部分などに残っている原因が修復されたわけではありません。
応急養生後は、必ず原因調査と本修理へ進む必要があります。
屋根の応急養生を依頼すべき状況
次のような場合は、ご自身で屋根を確認せず、専門業者へ応急養生を相談してください。
現在も室内へ水が入っている
天井から水滴が落ち続けている、壁紙の内側から水が出ている、複数の部屋で雨漏りしている場合は、屋根や建物内部へ継続的に水が入っている可能性があります。
室内で水を受けるだけでは被害を抑えきれない場合、屋外側の応急養生が必要になることがあります。
台風や強風の後に屋根材の異常が見える
地上から見たときに、次のような異常が確認できる場合があります。
- 瓦がずれている
- 棟板金が浮いている
- 屋根材の一部がなくなっている
- 金属板がめくれている
- 屋根上に飛来物が乗っている
- 軒先や雨樋が変形している
ただし、確認は地上や室内から行い、屋根へ上らないでください。
本修理まで数日以上かかる
台風や集中豪雨の後は、屋根業者への依頼が集中することがあります。
本格的な調査や修理まで時間がかかる場合、先に応急養生だけを行い、室内への浸水をできる限り抑える方法があります。
店舗・工場・倉庫で被害が拡大している
住宅だけでなく、店舗、工場、倉庫、事務所でも、雨漏りによって商品、機械、電気設備、書類などへ被害が広がることがあります。
被害対象が多い建物では、室内の移動・隔離と屋根の応急養生を並行して検討します。
専門業者が行う主な屋根の応急養生
実際の処置方法は、屋根材、勾配、破損範囲、天候、建物の高さ、周辺環境によって変わります。
一般の方がまねをすると危険なため、ここでは施工手順ではなく、業者が行う処置の目的を説明します。
広い範囲を保護するシート養生
雨水の入口をすぐに特定できない場合や、複数の屋根材が破損している場合には、原因と考えられる範囲を広く保護する養生が検討されます。
単に雨漏りしている室内の真上だけを覆うのではなく、屋根の勾配、雨水の流れ、風を受ける方向、棟や谷などの位置を確認したうえで、保護範囲を判断します。
破損部分を限定して保護する部分養生
破損箇所が比較的明確な場合には、棟、谷、屋根材の欠損部分、屋根と外壁の取り合いなどを限定して保護する方法があります。
ただし、見た目で破損している場所と、実際の雨水浸入口が同じとは限りません。
部分養生後も雨漏りが続く場合は、別の浸入経路が存在する可能性があります。
飛散・落下しそうな部材の安全確保
台風や強風によって、棟板金、金属屋根、瓦、アンテナ周辺部材などが不安定になっている場合があります。
そのままにすると、部材が落下・飛散し、周囲の住宅、車、人へ被害を与えるおそれがあります。
専門業者は、屋根上の状態と安全に作業できる条件を確認し、必要に応じて一時的な安全確保を行います。
排水経路の確認と確保
陸屋根、ベランダ、谷樋などでは、排水口や雨水の通り道が塞がることで、水がたまり、建物内部へ浸入する場合があります。
ただし、雨の最中に屋根上や排水口へ近づくことは危険です。
業者が安全を確認したうえで、排水経路、詰まり、オーバーフローの状況を確認します。
ブルーシート養生でできること・できないこと
ブルーシートは、雨水の浸入量を一時的に抑えるために使われる代表的な養生資材です。
しかし、万能な修理方法ではありません。
| できること | できないこと |
|---|---|
| 破損範囲を一時的に保護する | 雨漏り原因を確定する |
| 本修理までの浸水量を減らす | 防水紙や下地の劣化を修復する |
| 屋根材が欠損した部分を仮に覆う | 再発を防止する |
| 室内被害の拡大を抑える | 長期間の防水性能を保証する |
| 調査・修理までの時間を確保する | すべての雨漏りを完全に止める |
設置後も、風、雨、紫外線、屋根の形状などの影響を受けます。
「シートを張ったから数か月放置しても大丈夫」とは考えず、天候が落ち着いた後に原因調査と本修理を進めてください。
屋根材によって応急養生の方法と危険性は異なる
同じブルーシート養生でも、屋根材によって注意点が変わります。
瓦屋根
瓦屋根では、割れやずれだけでなく、瓦の下にある防水紙や下地が傷んでいる場合があります。
不用意に瓦の上を歩くと、正常だった瓦を割ったり、ずれを広げたりする可能性があるため、屋根構造を理解した業者による判断が必要です。
スレート屋根
スレート屋根は、経年劣化によって割れやすくなっている場合があります。
表面から異常がないように見えても、踏んだことで新たなひび割れや欠損を発生させることがあります。
金属屋根・トタン屋根
金属屋根は、濡れると滑りやすく、強風時にはシート自体が大きくあおられる危険があります。
釘やビスの浮き、板金のめくれ、継ぎ目の異常など、破損状態に合わせた処置が必要です。
陸屋根・屋上
陸屋根では、防水層の破損だけでなく、排水口の詰まりや水たまりが原因になっている場合があります。
シートや資材で排水経路を塞いでしまうと、別の場所へ水が回ることがあるため注意が必要です。
工場・倉庫の折板屋根
折板屋根では、ボルト周辺、継ぎ目、明かり取り、換気設備、外壁との取り合いなど、複数の浸入候補があります。
建物の高さや屋根面積も大きいため、住宅とは異なる安全設備と施工計画が必要です。
自分でしてはいけない屋根の応急処置
屋根に上る
雨の後の屋根は、表面に水分が残っていることがあります。
乾いているように見えても滑ることがあり、屋根材の劣化状態によっては踏み抜きや破損も起こります。
屋根作業は、専門業者でも墜落防止設備を使用して行う高所作業です。
雨樋やベランダ手すりにロープを結ぶ
雨樋や一般的な手すりは、屋根養生や墜落防止用の固定設備として設置されたものではありません。
固定強度を確認せずにロープを結ぶと、雨樋や手すりが破損するだけでなく、作業者や資材が落下する危険があります。
ブロックやレンガを屋根上の重しにする
屋根上に置いたブロックやレンガは、ずれたり転がったりすると、屋根材を破損させる可能性があります。
強風で落下すれば、建物、車、人へ重大な被害を与えるおそれもあります。
原因不明の場所へコーキングを大量に塗る
屋根には、雨水を排出するために必要な重なりや隙間があります。
原因を確認せずにコーキング材で塞ぐと、排水経路を変え、別の場所へ雨水を回す可能性があります。
また、後から行う散水調査や目視調査の判断を難しくすることもあります。
防水テープを屋根材へ無差別に貼る
防水テープは、貼る場所、下地、乾燥状態によって接着性が変わります。
誤った場所へ貼ると、はがれたテープが排水経路を塞いだり、屋根材の表面を傷めたりする場合があります。
天井の膨らみに穴を開ける
天井が膨らんでいる場合、天井材の上に雨水、濡れた断熱材、建材などがたまっている可能性があります。
穴を開けると、一気に水が落下したり、天井材が崩れたりする危険があります。
照明や配線が近い場合は電気事故の危険もあるため、真下から離れて専門業者へ連絡してください。
自分で散水して雨漏り箇所を探す
原因が分からない状態で屋根や外壁へ水をかけると、新たな浸水を発生させたり、複数の浸入経路が混ざって判断できなくなったりすることがあります。
散水調査は、室内側の監視、散水する位置、時間、順番を管理しながら行う専門的な調査です。
業者が到着するまでに行うこと
屋根には上らず、室内で安全にできる範囲だけ対応します。
人を雨漏り箇所から離す
天井が膨れている、天井材が下がっている、水滴の量が急に増えた場合は、その場所の真下に人が入らないようにしてください。
家具や家電を移動する
安全に移動できる場合は、家具、寝具、衣類、書類などを雨漏り箇所から離します。
家電製品、電源タップ、コンセント周辺が濡れている場合は、濡れた手で触らないでください。
消防庁は、電気製品へ水がかかると漏電や火災の原因になると案内しています。浸水や漏水によって配線や電気器具が濡れた場合は、再使用前に電気工事店の点検を受けることが推奨されています。
火花、焦げ臭いにおい、煙、異常な音がある場合は、その場所から離れ、緊急通報を検討してください。
雨水を受ける
安全な場所であれば、雨漏り箇所の下にバケツなどを置きます。
床にはビニールシートやごみ袋を広げ、バケツの中へタオルを入れると、水滴の跳ね返りを抑えられます。
写真と動画を撮影する
撮影するのは、屋根の上ではなく室内や地上から見える範囲です。
次の内容を記録してください。
- 雨漏りしている部屋全体
- 水が落ちている場所
- 天井や壁のシミ
- シミの大きさが分かる写真
- 雨水が落ちている様子の動画
- 地上から見える屋根の異常
- 濡れた家具や内装
- 応急処置を行う前後の状態
発生状況をメモする
業者へ次の情報を伝えると、応急養生と原因調査の判断がしやすくなります。
- 雨漏りを発見した日と時刻
- 雨が降り始めてから漏れるまでの時間
- 雨の強さ
- 風の強さと方向
- 雨が弱くなると止まるか
- 毎回同じ場所から漏れるか
- 過去に屋根や外壁を修理したか
- 建物の築年数
- 分かる範囲での屋根材
- 複数の部屋で漏れているか
業者へ伝える文章例
本日18時ごろ、雨が強くなってから約1時間後に、2階北側の部屋の天井から水滴が落ち始めました。
現在はバケツで水を受けています。
天井に約30cmのシミがあり、照明からは少し離れています。
地上から屋根を確認しましたが、異常は分かりません。
室内の写真と動画を送れます。
屋根の応急養生が必要か確認をお願いします。
建物の種類別に最初に連絡する相手
| 建物 | 最初に連絡する相手 |
|---|---|
| 自己所有の戸建て | 雨漏り調査・屋根応急養生に対応した専門業者 |
| 賃貸住宅 | 管理会社または大家 |
| 分譲マンション | 管理会社または管理組合 |
| 賃貸マンション | 管理会社または貸主 |
| 店舗・事務所 | 建物所有者、管理会社、設備担当者 |
| 工場・倉庫 | 施設管理担当者と屋根工事対応業者 |
賃貸住宅やマンションでは、建物所有者や管理側の承諾が必要になる場合があります。
緊急性を伝えるため、雨漏り箇所の写真や動画を準備して連絡してください。
屋根の応急養生を依頼したときの流れ
1.電話やフォームで状況を伝える
住所、建物の種類、雨漏り箇所、発生時刻、雨の状況、写真の有無を伝えます。
2.天候と安全条件を確認する
雨や風が強い場合は、すぐに屋根へ上がれないことがあります。
危険な天候の中で無理に作業する業者ではなく、安全条件を確認して対応方法を説明する業者を選んでください。
3.室内と地上から状況を確認する
雨漏り箇所、天井裏、外壁、軒先、屋根全体などを確認します。
屋根へ上がる前に、安全な進入経路や墜落防止方法も判断します。
4.必要な範囲を応急養生する
屋根材、破損範囲、雨水の流れを確認し、現場に適した方法で一時的な保護を行います。
5.施工前後の写真を記録する
どこを、どの範囲まで養生したのか、写真で確認できる業者が望ましいでしょう。
6.原因調査と本修理の計画を立てる
応急養生だけで終わらせず、雨漏りの入口と浸入経路を確認します。
必要に応じて、目視調査、屋根裏調査、散水調査、赤外線調査、発光液調査などを組み合わせます。
雨漏り調査の詳しい内容は、次の記事で解説しています。

応急養生を依頼するときに確認する項目
見積もりや作業説明では、次の内容を確認してください。
- 応急養生の対象範囲
- 使用する資材
- 作業前後の写真がもらえるか
- 出張費や作業費に何が含まれているか
- 養生だけの依頼が可能か
- 天候不良時はどこまで対応できるか
- 養生後の点検方法
- 原因調査を行うか
- 本修理の見積もりは別になるか
- 養生の撤去費用が含まれているか
「とりあえずシートを張って終わり」ではなく、その後の調査と修理まで説明できる業者を選びましょう。
応急養生後に必ず行うこと
天候が回復したら原因を調査する
雨漏りした室内の位置と、屋根の浸入口は一致しないことがあります。
屋根材の下へ入った雨水が、防水紙、野地板、梁、断熱材などを伝い、離れた場所から室内へ出るためです。
そのため、室内で水が落ちている場所の真上だけを修理しても、雨漏りが止まらないことがあります。
応急養生を長期間放置しない
応急養生は一時的な処置です。
風雨を受けることで、シートのずれ、固定部分の緩み、資材の劣化が起こる可能性があります。
確認のためにご自身で屋根へ上がらず、必要な点検も業者へ依頼してください。
原因が分からないまま工事を始めない
「瓦がずれているから交換する」「怪しい隙間へコーキングする」だけでは、本当の雨水浸入口を修理できない場合があります。
調査結果、原因箇所、施工範囲を写真や図で説明してもらってから、本修理を判断してください。
よくある質問
雨が降っている最中でも応急養生できますか?
雨量、風速、屋根の勾配、建物の高さ、安全設備によって判断が変わります。
強風や強い雨の中では屋根上作業ができない場合があります。その場合は室内の安全確保を優先し、天候が落ち着いてから屋外養生を行います。
ブルーシートは自分で張ってはいけませんか?
屋根への昇降、濡れた屋根上での移動、資材の運搬、シートが風を受ける危険があるため、ご自身での設置はおすすめできません。
雨樋やベランダ手すりにロープを結び、ブロックを重しにする方法も避けてください。
応急養生だけ依頼できますか?
業者によって対応範囲が異なります。
連絡時に「本修理の前に、屋根の応急養生だけを希望している」と伝えて確認してください。
ブルーシート養生はどのくらい持ちますか?
一律の期間はありません。
天候、屋根の形状、風の影響、使用資材、設置方法によって状態が変わります。長期使用を前提にせず、できるだけ早く原因調査と本修理を行ってください。
シートを張ったのに雨漏りが止まらないのはなぜですか?
シートで保護した範囲とは別の場所から雨水が入っている可能性があります。
屋根だけでなく、外壁、サッシ、ベランダ、笠木、換気口、屋根と壁の取り合いなどから浸入している場合もあります。
また、建物内部に残っていた水が、雨が止んだ後もしばらく落ちてくることがあります。
雨漏り箇所へコーキングを塗れば止まりますか?
原因が特定できていない状態でのコーキングは避けてください。
雨水の出口や排水経路を塞ぎ、別の場所へ水を回したり、原因調査を難しくしたりする場合があります。
天井が膨らんでいます。水を抜いたほうがよいですか?
穴を開けず、真下から離れてください。
天井材、断熱材、たまった雨水が一気に落下する可能性があります。照明や配線が近い場合は、電気設備にも触らず、専門業者へ連絡してください。
屋根の雨漏りは「安全確保・応急養生・原因調査」の順で対応する
屋根から雨漏りしたときに、一般の方が屋根へ上ってブルーシート、防水テープ、コーキング材などを施工するのは危険です。
ご自身で行うのは、次の範囲までにしてください。
- 人を危険な場所から離す
- 安全な範囲で雨水を受ける
- 家具や家財を保護する
- 写真や動画を記録する
- 管理会社または専門業者へ連絡する
屋根上の応急養生は、建物と室内の被害を一時的に抑えるための処置です。
応急養生をした後は、雨漏りの入口と水の通り道を調査し、原因に合った本修理を行わなければ、再発する可能性があります。
屋根には上らず、雨漏り箇所の写真、発生時刻、雨と風の状況、建物情報を用意したうえで、屋根の応急養生と原因調査に対応できる専門業者へ相談してください。
屋根の応急養生が必要か判断できない方へ
次の情報をお伝えいただくと、状況を確認しやすくなります。
- お住まいの地域
- 戸建て・集合住宅などの建物種別
- 雨漏りしている部屋
- 水滴・天井の膨らみ・シミなどの症状
- 雨漏りが始まった時刻
- 室内の写真や動画
- 地上から見える屋根の異常
無理に屋根を確認せず、安全な室内または地上からご相談ください。



